島根県の離島である、人口約2300人という規模の小さな町、海士町。廃校寸前だった島唯一の高校のV字復活させて「教育魅力化プロジェクト」や島の資源を活かした産業振興に始まり、近年では20代の若者向け就労型お試し移住制度「大人の島留学」など、個性的な地域活性化のための取り組みで知られています。
2023年より海士町の町役場にもプレーリーカードが導入されました。その新しい取り組みのキーパーソンである、海士町役場の青山達哉さん(還流DX特命官)、同じく清瀬りほさん(還流促進特命担当)に、行政の現場でプレーリーカードがどのような価値を発揮しているのか、お話を伺いました。
〜この記事はこんな方におすすめ〜
・自社サービスの魅力を伝えたい営業担当者、採用担当者、ブランド戦略担当者
・地域の魅力発信をもっとしたいと思っている自治体関係者
- 導入のきっかけ -
- 活用方法 -
- 効果 -
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伝えきれない地域の魅力をどう伝える?
──まずは、簡単にお二人のプロフィールからお伺いできると嬉しいです。
青山達哉さん(海士町役場・還流DX特命官)
青山達哉:海士町生まれで、高校生まで海士町育ちです。大学進学を機に関西地方へ行き、ご縁あって海士町へUターンすることになり、その後海士町役場へ入庁しました。
清瀬りほさん(海士町役場・還流促進特命担当)
清瀬りほ:私は鹿児島県の離島の徳之島出身です。鹿児島本土にある大学へ進学し、大学で、離島の教育をテーマに卒論を書いていたので、海士町の「隠岐島前高校魅力化プロジェクト」を知ったことがきっかけで新卒で役場に入庁しました。
──海士町役場では、プレーリーカードを活用されています。そもそものきっかけはなんだったんでしょうか?
青山:そうですね。僕は、行政職員って、自己PRや自己表現をする機会があまりないな、という感覚があり、、。特に田舎の行政職員だと、地域のここが好き!という熱い思いを持っている人も多いはずだし、どの部門も大切なお仕事をしているのに、その人のトーク力によって伝えられる情報量や情報の質が変わってくるというのが、少しもったいないような気がしていました。
せっかく届けられるチャンスなのにもったいない、と思っていた時期に、島のよく話す仲間がプレーリーカードを使っておりピンときて、デジタル名刺を使えば、無理に全て口頭で話さなくても、読み取ってもらった情報が補完してくれるな、と。
職員の30%が活用中、効果の良し悪し
──課題感と出会いはよくわかりました。実際に導入してみてからのお話を聞かせてください。まずプロフィールページはどのような構成になっているのでしょうか?
青山:現状では、プロフィールページの基本的な構成は自己紹介部分以外は全員同じような構成としており、海士町が対外的に発信していきたい取り組みやオフィシャルSNSアカウントなどを、情報として届けられるような構成にしています。
ただ、職員が自分のページを自身で構成を変更できるように権限を付与しているので、それぞれの職員が担当している事業などの紹介なども載せたりといった形で、職員自らが工夫できるようにしたりしています。
自己紹介部分だけで比較しても、職員それぞれの個性が出ており、導入を促す側の我々からしても、見ていて非常におもしろい取り組みになってきたな、と実感しています。
まだ、職員の30%くらいに試験的に配っている段階なのですが、今年度中には全庁的な導入を目指していきたいと思っています。
──現状どんな効果が出ていますか?
青山:正直なところ、行政の中にデジタル名刺を導入し、その手応え的なものはまだまだ試験的に導入している段階というのが、現状です。
やはり世の中的には、その場の雰囲気によって、「デジタル名刺」を出すことをにハードルを感じる場がまだまだあったりするような気も個人的にはしていますし、紙名刺を出す方がある意味「無難」な場面って多いのかもしれません。
紙名刺の削減といった文脈では、まだまだ浸透していないように感じている一方で、紙名刺と併用して「デジタル名刺」を提示している職員の姿もよく見られるようになりました。
こうした状況から、約3割のデジタル名刺を持っている職員にとって、確実に「デジタル名刺」を提示する行為は、どこか情報交換体験を楽しんでいるように感じます。
デジタル名刺を相手に読み取ってもらうことで、
- 役場でデジタル名刺を導入してるなんてすごい!
- 海士町の取り組みの情報がスマホですぐに情報として受け取れる
- おもしろい!
といった反応を相手からもらえることが多いです。
やはりデジタル名刺を導入したおかげで、自身の担当する事業以外にも自治体の取り組み(強み)を全体的に情報として伝えられるといった声も上がってきています。
青山さんのプレーリーカードとマイページ
──交換回数を可視化し、人材育成にも活用
青山:名刺交換が多い人と少ない人、「見える化」できるのもメリットかなと思っています。
仕事内容にもよるのかもしれませんが、人との出会いが多い人ほど人脈を拡げたり、それが仕事に繋がったり、自身の人生を豊かにしたりするんじゃないかと、個人的には考えています。そういった意味でもデジタル名刺の交換回数(読み取り回数)が、人材育成の1つの観点などとして活かされるような可能性もあったりすると面白いですよね。
カードの裏面は、「ないものは、ない」の英訳と、島の名産品や観光名所が並ぶ。それぞれのカードを上下に繋げると円になる、循環をイメージしたデザイン。
多様化する町、多様化する働き方だからこそ
──人口2300人という海士町さんの規模だったら、職員さんだけでなく、町民の方にもプレーリーカードを持ってもらって、互いに交換し合う文化に育っていったら面白そうです。
青山:そうなんですよ。昔であれば、島内は地元の人間ばかりだったので、職員も住民もお互いがどんな人なのか、はなんとなくわかってたんです。今は島外からの移住も増えているので、どこの出身で、どんなことが好きで、趣味はこれで……と、お互いにスムーズに紹介しあえたら良いな、とは思っていますね。プレーリーカードの普及・活用拡大は、色々と検討中です。
──海士町には、役場の職員さんの副業を推進する「半官半X」という考え方があると聞きました。みなさんの働き方が多様になるにつれ、プレーリーカードの役割も増しそうです。
青山:
海士町役場には「半官半X」という兼業や複業を可能とするような制度ができたのですが、これによって今後は役場職員一人一人に、働き方や地域での役割などがこれまで以上に多様になってくるんじゃないかと思っています。
そうなると、より肩書きや活動が増えることにもなり、自己紹介のかたちにも行政職員一人一人の個性が出てきそうですよね。そうした一人一人の個性を地域や組織の強みとしてスマートに伝えられるのが、デジタル名刺の強みだと思います。組織の中でこうした多様な働き方を推進していくことは、職員にとって本当に幸せなことなのか、ということも含めて、効果的な運用を模索していかなければならないと思っているところです。
デジタル名刺の導入は、「なんのために」が大事
──実際にプレーリーカードを使ってみていかがですか?
清瀬:わたしの部署は外部の方と会うタイミングがすごく多いので、とても助かっています。挨拶が気軽なものになりますし、名刺交換の時間には説明しきれない情報も、プロフィールページに記載しているので、後から見てくれる方もいます。
──海士町の先進的な取り組みに注目している自治体関係者は多いと思います。
青山:
自分自身が担当している事業である「大人の島留学」を含め、海士町には様々な取り組みがありますが、どの取り組みも成功事例とはいえず、まだまだ課題も多い「挑戦中」の取り組みであると、我々としては感じています。
そういった意味でも、海士町の取り組みの「仕組み」自体にももちろん価値はあるのかもしれませんが、「仕組み」以上に、「何のためにやるのか、何を目指すのか」といった「目的」こそが、自治体や地域にとっても最も重要な気がしています。
海士町の取り組みが、他の自治体等にとって寄与できることが少しでもあれば有難いですが、自分自身への自戒の意味も込めて、「何のために?」といった「思想」の部分も意識していくことが重要な時代なのかなと感じています。
実は、プレーリーカードをさらに活用した「海士町アンバサダー制度」というものを立ち上げて、海士町の関係人口に関する事業戦略の柱にしようとしています。デジタルを活用することによって、関係人口と呼ばれる海士町と繋がりのある世界中の方々との「関係性」を可視化し、「まちづくりへの参画を促す」ような仕組みを構築しようと考えています。その延長線には、色々な自治体が抱えていらっしゃる関係人口の方が起点となって、地域と関係人口、地域と地域、関係人口と関係人口など、自治体経営の在り方に新しい風を起こしていけたらと期待しています。
僕たちは「関係人口経営」と呼んでいますが、そんな新しい地域経営スタイルを目指していけたらワクワクしますよね。
プレーリーカードを活用した関係人口増加プロジェクトである「海士町アンバサダー制度」の詳細についてはこちらの記事から
Photo / Akane Sakaki
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