日本橋にあるオープンスペース「+NARU NIHONBASHI(以下、「NARU(ナル)」) 」は、「好奇心で動き出す日本橋のオープンスペース」をコンセプトとした活動拠点です。利用者の「やってみたい!」という好奇心を元に、さまざまなプロジェクトやイベントが企画され、そうした活動の先に豊かなコミュニティが生まれ、地域が活性化していくことが目指されています。
このNARUでは、利用者とスタッフのコミュニケーションを活性化するツールとして、プレーリーカードが導入されています。プレーリーカードが、どのように施設のコミュニケーションに寄与しているのかについて、NARUの運営を行っているNARUのディレクターの坂本 彩さんにお話を伺いました。
NARUは、三井不動産株式会社が開業し、株式会社Goldilocks(本社:東京都中央区、代表取締役社長:川路武)が受託を受け、様々な専門性を持つスタッフと共に運営を行っています。
〜この記事はこんな方におすすめ〜
・コワーキングスペースを運営している方
・コミュニティマネージャーの方
・顧客との関係性構築に興味がある方
- 導入のきっかけ -
- 活用方法 -
- 期待できる効果 -
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コミュニケーションを活性化するためのツールとして
──まずは、NARUについて教えてください。
NARUは「好奇心で動き出す日本橋のオープンスペース」をコンセプトとした活動拠点です。世の中的には「コミュニティスペース」という言葉がわかりやすいのかもしれませんが、「人とつながること」を目的にするのではなく、「利用者の主体的な活動」を生み出すことでその先にヘルシーな繋がりを生み出そうということを目指しているので、あえて「コミュニティスペース」という言葉を使っていません。
「やらねばならないこと」ではなく、一人一人の「やってみたい!」という好奇心を原動力にすることで、イベントやプロジェクトが自分ごと化され、施設やまちへのエンゲージメントが高まるのではないか、という仮説を持って運営しています。そうした活動が生まれることで、施設やまちにプラスのエネルギーが循環していくのではないかと考えて、NARUを立ち上げました。
NARUの運営を行うディレクターの坂本 彩さん
ーNARUでは様々なデジタルのコミュニケーションツールを導入されていますが、どういった背景があったのでしょうか?
こうした施設の運営において課題になることの一つが「属人性の高さ」にあると思っていました。実際施設の雰囲気や環境を作り出すのは絶対的に「人」だと思っているので、属人的であるべきとも思っているのですが、再現性がないことや、スタッフの負担が増えてしまっては本末転倒です。企画の質を高めたりスタッフの省力化につながる部分があるなら積極的にツールの導入を検討していこう、と当初から話をしていました。
属人的なコミュニケーションの価値を最大化するためのデジタル活用を考えた、と言っても良いかもしれません。利用者の皆さんとスタッフのコミュニケーションを活性化したり、コミュニケーションの負担を軽くしたり。そういったことのために、ツールの導入を考えていきました。
スタッフの人となりを利用者に知ってもらえる仕組みづくり
──プレーリーカードもそうした背景の中で導入されたということですね。導入のきっかけを教えてください。
当初はユーザーのデータをどう活用していくか?という観点から、様々なツールの導入を考えていて、その中でプレーリーカードも候補に上がった形でした。結局、ユーザーのデータの蓄積・活用についてはLINEの拡張ツールサービスを使うこととしたのですが、運営していく中で「施設に何度もきてもらうためにはどうすべきか?」という別の課題を得ることになります。そこでプレーリーカードを導入しよう、という話になりました。
施設をリピート利用してもらう、ということを考える上では「居酒屋と常連さん」の関係性を参考にしました。居酒屋の大将が自分の顔を覚えてくれて、自分も「大将お疲れ!」と挨拶ができる。「名前と顔の認知」ということが施設への愛着とエンゲージメントを高めると考えたんですね。それでまずは、利用者の方にスタッフの顔や名前、人となりを認識してもらうことからはじめよう、ということになりました。そこにプレーリーカードが活用できそう、という話になったんです。
──具体的にはどのような仕組みが導入されているのでしょうか?
NARUでは、施設での行動データをとるために、LINE上での「チェックイン」と「チェックアウト」を利用者さんにお願いしています。この導線上に、スタッフとの心理的距離が近くなるような仕掛けを入れることにしました。
まずは、チェックインです。今までは、入り口に入退室管理用のQRコード看板を置き、それを利用者の方に読み取っていただいていましたが、一つも会話がないまま施設を利用されてしまいNARUのコンセプトとかけ離れた、「ただの作業場所」になってしまいかねない、という課題がありました。
そこで、入退室管理用のQRをスタッフのネームカードに導入することにしました。これによりスタッフも「おはようございます、これを読み込んでくださいね」とコミュニケーションをとるきっかけを得ることができます。また、スタッフごとにネームカードに記載する入退室管理用のQRデータを変えることで、どのスタッフ経由で利用者が入退室を行ったか、ということも可視化することができるようになりました。この機能を応用してQRを読み込むと、利用者の方のLINEに、
「こんにちは!NARUスタッフの〇〇です。ゆっくりしていってくださいね!」
というように、対応したスタッフの名前と、ハッシュタグで出身地や趣味情報など、そのスタッフのキーワードが届く形をとりました。このことで対応したスタッフの顔と名前が、利用者さんが把握できるようになります。
つぎに、「チェックアウト」です。このタイミングで、プレーリーカードのプロフィールページを活用しています。施設を利用する中で利用者の方々はスタッフと様々なコミュニケーションをとっているはずなので、利用終了時には、
「今日話したスタッフのQRでチェックアウトしてくださいね」
とご案内をしています。利用者の方は施設の出口にあるスタッフごとのQRパネルを読み取り、チェックアウトをします。そうするとLINEにスタッフからのメッセージが自動で届き、プレーリーカードのプロフィールページURLが送られてくるような仕組みを設計しています。
スタッフの名前が記載されているQRコードパネル
プレーリーカードのプロフィールページには、スタッフのより詳細な経歴、趣味、SNSなどの情報を掲載しています。
- チェックインではスタッフの名前と特徴を
- 施設利用中にはスタッフとのリアルなコミュニケーションを
- チェックアウトの際にはより詳しいスタッフの人となりを
という形で、少しずつコミュニケーションの濃度を高めるような形にしています。
(左)チェックアウト時にNARU公式LINEから届くメッセージ
(右)NARUスタッフのプロフィールページ
プレーリーカードのプロフィールページを通じて、スタッフと利用者との会話のきっかけを作ったり、利用者の方にスタッフをより詳しく知ってもらう導線を作れているのではないかと思っています。知っているスタッフがいる方が再び訪れたいと思っていただけると思いますし、スペースの利用やイベントへの参加意識の向上にもつながっていると思います。
プレーリーカードとLINEを組み合わせた仕組み
スタッフさんではなく〇〇さんと呼んでもらえる仲になるために
── スタッフのプロフィールページにはどのような情報を載せているのですか?
スタッフのプロフィールページはスタッフに自由に構成してもらっています。うちのスタッフはみんな他にも仕事や活動を持っているので、そうした活動も書いてもらっています。そういった情報がわかるとより距離も縮まるかなと思っています。
NARUスタッフのプレーリーカード
──プレーリーカードを導入して、どのような変化がありましたか?
プレーリーカードは、利用者とスタッフの距離感を縮めるきっかけになってくれていると感じます。例えば、プレーリーカードのプロフィールに載っている情報から、「出身地が一緒だった」「共通の趣味があった」など、プロフィールページがきっかけで会話が弾むこともあります。利用者の方たちにとって、スタッフが単なる施設のスタッフではなく、知人・友人のように認識されるようになっていったらいいなと思っています。
プレーリーカードが施設を発信するメディアになる
──今後は、スタッフの皆さんのスタッフ証以外としてもご利用いただく予定と伺いました。
まだどういった活用をしていけるかという点は検討中なのですが、利用者の方々にお渡しするというトライアルも始めています。現在NARUでは、「施設スタッフ」と「利用者」の間の存在として「NARUクルー」というメンバーシップを立ち上げています。
「NARUクルー」の皆さんは「施設を利用する」「イベントに参加する」だけではなく「イベントを企画する」「イベントを運営する」といった、よりコミットメントの高い方々として位置付けています。これからこのクルーの方々にプレーリーカードをお渡しして、活動のポートレートなどを登録いただけたらということを考えています。このことにより、クルーの方が「こんなことをやってる」とNARUでの活動を紹介してくださることを後押しできれば、施設の認知向上や、クルーの方々の次の活動の広がりに寄与できるのではないかと考えています。
+NARU NIHONBASHI
Interview&Photo / Hayato Sakai、Erika Sodai
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